ザ・ローリング・ストーンズ/ブラック・アンド・ブルー

「ブラウン・シュガー」にワクワクしても、「アンジー」にゾクゾクしても、ストーンズが好きだと思ったことはなかった。それどころか、他の楽曲を耳にするたび、なんだかごちゃごちゃして小うるさいとまで思っていた。それが76年のこのアルバムで一変した。

変化はおそらく、ストーンズにもぼくにもあった。この作品は彼らにとって初の全米プラチナ・ディスクに輝いたほどのものだったし、ぼくはといえばコーラス・ワークのビシリと決まった流行の西海岸サウンドに食傷気味でいた。そんなときに聴いたのが「メモリー・モーテル」。ダルなコーラスにたちまち魅了された。小ぎれいにカチリとまとまったものよりも、半ばヤケクソのようにも聞こえるコーラスが、ぼくにはたまらなく美しく思えたのだった。

また、それまでリード・ギターにばかり向きがちだったぼくの関心を、「ホット・スタッフ」や「ヘイ・ネグリータ」といった曲は、横っ面を張るような勢いでリズム・ギターへと向き直させもした。こうしてぼくは、黒いノリというものをわずかながらも体感していくのである。

2002.11